新聞、雑誌等のメディアによって誹謗中傷殿損がなされる場合において、メディアに情報を提供した者(情報提供者)についても、誹謗中傷殿損による不法行為が成立するかどうかが問題となる。
原則として、情報提供者において、提供した情報がメディアに掲載されることを認識していれば、共同不法行為(民法719条)が成立しうると考えられる(藤岡康宏「誹謗中傷R損における情報提供者(私人)の責任」判タ613号83頁)。
大阪地裁平成10年3月31日判決[渡邉安一コート](本書42頁)は、官公庁による情報提供の場合について、「それが一定の信頼度を置くことのできる情報で公共の利益に直結し、かつ、報道の迅速性を要することから、報道機関が逐一発表内容の裏付け取材をすることなくそのまま報道されることが多いので、情報提供者においても当該提供情報に即した記事が掲載される蓋然性が高いことを容易に予見できる」と判断している。
このように、情報提供行為が官公庁による場合には、情報提供者の情報提供行為とネット誹謗中傷R損という結果との間の因果関係は肯定されやすく、原則として、情報提供者にも不法行為が成立するといえる。