2013年3月アーカイブ

従前の誹謗中傷A損訴訟においては、被害者の属性、被害の甚大さ、マスコミ側の動機、記事掲載内容をほとんど考慮することがなかった。

これに対し、近時の実務・裁判では上記点数表に記載された算定要素を考慮して、損害額の具体的認定がなされているといえ、点数表は誹謗中傷殿損訴訟における類型化、高額化傾向に寄与しており、このこと自体は、評価に値する。

また、点数表の1点10万円の算定により、マスコミ側の悪質な商業目的のセンセーショナルな誹謗中傷報道に対しては、ある程度高額の損害賠償が認められるようになってきていることも一定の評価がなされるべきであろう。

しかし、一部週刊誌等が意図的な誹謗中傷X損報道を続け、敗訴判決が重なっても改まらないという現状において、点数表に基づく損害賠償額はまだまだ低額に過ぎるといわざるをえない。

また、損害賠償額の上限金額が計算上「1、010万円」にとどまることも問題であろう。

傾聴すべき意見であるが、公共性・公益目的を充足する報道であり、かつ確実な裏付け取材を行ったものであれば、賠償責任を免責されることになるのであるから、賠償額の高額化は、マスコミへの萎縮的効果とは関係ないというべきである。

マスコミが市民の信頼を勝ち得るためには、慎重な報道姿勢こそが重要である。

現在のマスコミの報道姿勢に鑑みるとき、上記見解はかえって誹謗中傷R損的表現行為を誘発する可能性すらあり、賛成できない。

いわゆる点数表の算定基準との関係司法研修所は、「損害賠償実務研究会結果要旨」(判タ1070号4頁)において、誹謗中傷x損裁判における損害額について、点数評価方式による算定基準を設ける試論を公表した。

誹謗中傷R損の高額化について、表現の自由に対する萎縮的効果(chillingeffect)を与えないよう配慮すべきとの見解も存在する。

例えば、右崎正博「市場化する誹謗中傷殿損訴訟と表現の自由」(法苑140号1頁)は、これまで高額の損害賠償を命じた判決の大半が政治家、プロ野球選手、女優、その他社会的に相当な地位にある著名人のケースであることから、「高額の賠償金は、公人や公的存在に対する批判的言論あるいは公共的関心事に連なる表現や報道に萎縮的効果を生み、表現や報道を抑制させることになりかねない」とし、「そのような者に関してなされた表現や報道に対して高額の損害賠償によって不法行為責任を問う場合には、その表現や報道が真実ではなくまたは誤信相当性がないことの立証責任を、誹謗中傷殿損の被害者であると主張する当該公人ないし公的存在の側に負担させることが必要であると考えている」としている。

「誹謗中傷殼損による損害賠償額の算定」(NBL731号6頁)では、上記塩崎論文を指摘しながら、精神的苦痛に対する賠償としての慰謝料については、交通事故の場合の慰謝料の目安が参考になるとした上で、「慰謝料100万円では現在では低額にすぎ、500万円程度が一つの目安になる」とする。

そして、慰謝料算定の要素として、加害者側の事情を考慮することを検討し、制裁的慰謝料論や無形的損害の金銭的評価と民事訴訟法248条の利用、誹謗中傷回復処分との関係などを検討した結果、「誹謗中傷R損による損害賠償額の算定について提言するとすれば、損害賠償額の算定は究極的には一般国民の法意識に由来し、近時のこの点に関する各種論稿を踏まえて国民の意識の高揚が期待されるところであるが、精神的苦痛に対する慰謝料としては500万円程度を目安とし、加害者側の事情も考慮して算定すべきであり、それ以外にも慰謝料には無形的損害に対する賠償としての側面があることも考慮して、民事訴訟法248条を活用し、加害者の受けた利益や誹謗中傷回復に要する費用等も視野に入れて、適切な誹謗中傷回復処分との関係にも留意して総合的に算定すべきである」とされる。

誹謗中傷X損訴訟の慰謝料算定にあたっては、「違法性及び被害の程度に留意し、また、慰謝料の補完的機能に着目し、純粋慰謝料だけでなく、社会的信用の低下、人格権の侵害、営業的損害、財産的損害、原状回復のための金銭賠償、弁護士費用の各項目を検討の上で、損害額を算出することが大切である点に留意するならば、著名人に対する全国的な伝播性のある誹謗中傷段損行為に基づく損害賠償の額としては、とりあえずの基本額として400万円から500万円程度を一つの目安とすることができるのではなかろうか」と提言し、「これを一応の目安とした上で、誹謗中傷A損行為の伝播性の大小、被害者の社会的信用・著名性の大小、報道態様の悪質性の有無、報道目的の正当性等の減額要素など、諸般の事情を考慮して、事案に応じた適正な損害額を算定していくことが相当」と結論づけている。

「マスメディアによる誹謗中傷畏損訴訟の研究と提言」(ジュリ1209号63頁)においては、慰謝料を精神的損害に対する賠償に限定せずに、慰謝料の補完的機能に着目し、(i)社会的信用、人格権の侵害、(ii)営業的損害、財産的損害、(lll)原状回復のための金銭賠償、(iv)弁護士費用などを補完的機能として考慮すべき損害としている。

そして、純粋慰謝料とその他の慰謝料を厳密に区別することが困難であることから包括的慰謝料として認定し、その際、民訴法248条を活用する方法を提案している。

「損害賠償客則こおける損害額の算定平成13年度損害賠償実務研究会結果要旨(2001年5月17日開催)」(判タ1070号4頁)も、500万円程度を平均基準額とすることも一つの考え方であり、実務的にも参考になるとする。

上記司法研修所の損害賠償実務研究会に参加した坂本倫城大阪地裁判事(当時)は「損害賠償実務研究会を終えての若干の感想」(判タ1070号25頁)と題する論文の中で、多数の発行部数を擁するマスメディアによる現実の悪意をもってなされた悪質な誹謗中傷殿損事件の類型については、完全に表現の自由の範疇外にあるものとして、おおよそ500万円ないし1、000万円を超える損害賠償としてその抑止を期するべきとした上、現実の悪意によらないマスメディアによる誹謗中傷殿損事件とマスメディアによらない誹謗中傷R損事件について、最近の人格的な価値に対する社会一般の評価の高まり、マスメディアの影響力の増大、後遺障害慰謝料との対比や最近の裁判例の動向などに照らして、いわゆる従来の100万円程度の賠償額から500万円ルールにシフトさせるべきであるとされる。

「フォーカス」の誹謗中傷X損事件については、警視庁牛込署が誹謗中傷R損の疑いで発行元である新潮社の社長と当時の編集長、取材や執筆を担当した記者らを書類送検したことが大きく報じられた(ただし、後に告訴は取り下げられた)。

悪質な誹謗中傷殿損行為が後を絶たない事態に鑑みると、悪質な誹謗中傷X損行為を繰り返させないためには、賠償額に制裁的な要素を加味し、さらなる高額の賠償が認められなければならないといえる。

直接記事に関与しないはずの社長個人の責任が問われることは、極めて異例のことであり、判決に示されるように、「フォーカス」の取材・報道行為に関し違法行為が繰り返されていることから、社長は、従来の組織体制につき疑問を持って再検討し、肖像権の侵害や誹謗中傷殿損となる基準を明確に把握して違法行為が発生し被害が生ずることを防止する管理体制を整えるべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったことから職務の執行につき重過失があったとして、社長個人の責任まで認めたものである。

平成15年10月30日、東京高裁は賠償額の増額を認め、新潮社に対し計1、980万円の賠償を支払うよう命じ、最高裁第二小法廷[滝井繁男裁判長]は新潮社の上告を棄却し、東京高裁判決が確定した(平成16年10月2日付朝日新聞)。

また、刑事被告人の法廷内の姿を無断撮影した写真を「フォーカス」が掲載した事件では、大阪地裁は660万円の賠償金を命じ(大阪地判平14年2月19日[岡原剛コート]判タ1109号170頁・番号49、ただし大阪高判平14年11月21日[大喜多啓光コート]では440万円に減額・番号58、その後、最高裁(最一小判平17年11月10日[島田仁郎裁判長]は、本書162頁のとおり、イラスト画の公表につき、一部適法であるとし、さらに損害について審理を尽くさせるため、原審に差し戻した))、しかも、この事件については、新潮社と編集長のみならず、同社の社長に対する賠償請求も認められた。

熊本市の医療法人の理事長の妻と同法人が経営する病院の看護師ら4名が乗った車が崖から転落して全員が死亡するという事故に関し、理事長の妻に多額の保険金がかけられていたことから保険金目当てで理事長が事故に関与したかのような記事を掲載した「週刊新潮」に対し、平成14年12月27日に熊本地裁(番号59)が合計で990万円の賠償を認め、さらに、同趣旨の記事と写真を掲載した写真週刊誌「フォーカス」については、平成15年4月15日に東京地裁が誹謗中傷X損と肖像権侵害により合計1、320万円もの高額の賠償を命じた。

新潮社は、裁判所の数度の損害賠償命令を受けながらも、悪質な誹謗中傷殿損記事を掲載し続けるとともに、中吊り広告などによって宣伝を繰り返しており、今日でも新潮社に対する誹謗中傷X損事件の提訴は後を絶たない。

最近の週刊誌における誹謗中傷A損事件の認容された賠償額について、出版社別に見てみても、新潮社が他の週刊誌に抜きん出て認容されていることが明らかである。

このような事態は、悪質な誹謗中傷殿損に対する賠償額が、徐々に高額化傾向にあるものの、やはりまだ低額に過ぎるために生じていることは否定できない。

多くの判決例が指摘するように、これら週刊誌は販売部数を伸ばすために、電車の中吊り広告を利用し、結果的に広く読者に誹謗中傷X損事実を知らしめるものとなっており、誹謗中傷X損記事によって大きな利益をあげていることも考慮して賠償額を決定していると考えられる。

裁判所は、このような週刊誌による誹謗中傷X損に対して、近時、ようやく一定程度の高額な賠償を認める傾向にあり、特に週刊誌による人権侵害に対して積極的な歯止めをかけつつある。

しかし、週刊誌の中でも、とりわけ週刊新潮や平成13年に廃刊された写真週刊誌「フォーカス」などを発刊している新潮社は、その誹謗中傷殿損記事による損害賠償を命じた判決数は飛び抜けて多い。

最近の誹謗中傷殿損が認定され賠償額の支払いを命じた判例を調査した巻末一覧表によると、75件中週刊誌による誹謗中傷X損は37件と約半数を占める状況となっている。

特に賠償額が高額化してきた平成13年以降の判決例をみると、誹謗中傷殿損事件において、300万円を超えるような賠償を命じられているのは、週刊誌によるものがそのほとんどである。

それらの判決を概観すると、公益目的が存しないもの、あるいは、たとえ公益目的が存しても相当性が存せず取材方法も杜撰で悪意をもって誹謗中傷殿損記事を掲載したものばかりである。

なお、その際、アメリカ法で採用されている、公的人物ないし公共の関心事の法理は、日本では、プライバシーと表現の自由との比較衡量をする際の考慮要素として機能しているといえる。

以下、被害者の同意、公的人物ないし公共の関心事の法理、比較衡量論について検討する。

自己決定権は、アメリカでは、上記のとおり、プライバシーの保護範囲に含まれており、日本では、これを含めて考えるか否かについて、見解の一致をみない。

4プライバシーと免責要件(段)(1)はじめにプライバシー権は自己の人格権に基づくものであるから、それを公表することにつき本人の同意があれば、プライバシー権の侵害には当たらない。

同意がない場合、表現の自由とプライバシー権の調整をどのように図るべきかが問題となるが、判例は、両者の比較衡量により違法性の有無を決するという判断枠組を採用している。自己決定権は、アメリカでは、上記のとおり、プライバシーの保護範囲に含まれており、日本では、これを含めて考えるか否かについて、見解の一致をみない。

はじめにプライバシー権は自己の人格権に基づくものであるから、それを公表することにつき本人の同意があれば、プライバシー権の侵害には当たらない。

同意がない場合、表現の自由とプライバシー権の調整をどのように図るべきかが問題となるが、判例は、両者の比較衡量により違法性の有無を決するという判断枠組を採用している。

最高裁(最三小判平12年2月29日[千種秀夫裁判長]民集54巻2号582頁、佐久間邦夫・最判解説平成12年度(上)187頁、判時1710号97頁、判タ1031号158頁、潮見佳男・平成12年重要判例解説〔別冊ジュリ1202号〕66頁参照)は、「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない」として、自己決定権を認め、金55万円の賠償を認めた二審(東京高判平10年2月9日[稲葉威雄コート]判時1629号34頁、判タ965号83頁、駒村圭吾・平成10年重要判例解説〔別冊ジュリ11572号〕10頁)を維持した。

自己決定権(エホバの証人輸血事件)宗教上の信念から輸血を受けない「エホバの証人」の信者である原告(控訴人、被上告人。

その後死亡し相続人ら)が、その意思に反して輸血をされたことに対し、自己決定権等を侵害されたとして、医療機関側に金1、200万円を請求した。

東京地裁平成5年7月23日判決[富越和厚コート](判タ840号167頁)は、「前科」は一度は公表されていることから通常想定されているプライバシーの類型とは異なるが、前科は人の誹謗中傷、信用に直接関わる事項であり、犯罪者が刑の執行を受けた後は社会への復帰、更生のために前科の秘匿については特に保護が与えられるべきであるとしてプライバシー性を認め、本件については判決で公表された後更に1年4か月余経過した後に本件記事が掲載されたこと、公開を受忍させるのが相当であると認められないとして、プライバシー侵害を認め、誹謗中傷殿損と併せて金30万円の賠償を認めたものがある。

同様に収入源(年収)や家計を公表することが問題となった事例として、東京高裁平成13年7月18日判決([近藤崇晴コート]判時1751号75頁)がある(ただし、公益法人の役員に関する記事であったことから公表の公益目的が認められ、また、情報の入手方法や仮名報道であること、表現方法等が考慮されて被告の責任は否定された)。

まして、そのような収入の源泉からの具体的な収入金額については、その公表を欲しない事柄に属することは多言を要しない」として、年金の受給及び受給額をプライバシーと認め、金10万円の損害賠償を認めた(なお、月平均2万円を書籍購読料として支出している事実については、原告の人格的価値に対する評価を高めこそすれ、その低下を招くような性質のものとはいえず、一般人の感受性を基準とすると、それが公表を欲しないと認められるような事柄に当たるとは認め難いとして請求を退けた)。

この判断は二審(東京高裁平成6年(ネ)第3727号)でも維持されている。

東京地裁平成6年9月5日判決[横山匡輝コート](判時1534号68頁、判タ891号168頁)は、「収入の源泉は、その性質上、当該個人の精神的、肉体的な活動能力の有無ないしその程度に、したがって当該個人に対する社会的評価にもかかわる面が少なくない上、当該個人の私的生活領域を構成する様々な要因とも密接な関連を有するから、一般人の感受性を基準として判断すると、当該個人の社会的、経済的活動あるいはその身分関係等の社会的・外部的な事情から、それが客観的に明らかであるか、又は容易に推測される場合を除き、私的生活領域に属し、かつ、公表を欲しない事柄に属するものというべきである。

週刊新潮(新潮社)に、元警視庁警察官である原告(被控訴人)が、退職後に強盗殺人罪を犯し、死刑囚として在監中、警察共済組合から退職年金を月額6万円の割合で受給し、毎月の書籍購読料が2万円であるとの記事が掲載されたため、原告が、年金の受給、その金額、月の書籍購読料を公表することがプライバシー侵害であるとして、新潮社に対し、慰謝料金100万円を請求した。

東京地裁平成5年9月22日判決[金築誠志コート](判タ843号234頁)は、「離婚やそれにまつわる夫婦間の私生活上のトラブルが、一般に、いわゆるプライバシーの最たるものである」とした上で、「家族等が自らのプライバシーについて公表を容認していないのに、芸能人本人が容認しているからとして、家族等のプライバシーに属する部分を含めて公表したときは、芸能人本人に対しては適法行為とされても、家族等に対する関係では、違法なプライバシーの侵害として不法行為を構成する」として、芸能人とその家族のプライバシー侵害は区別して考えるべきであるとし、本件では、仮に女優である妻が公表を容認していたとしても、一般人である原告が明示又は黙示の承諾を与えたと解する余地はないとして、違法性を認め、誹謗中傷R損と併せて慰謝料金100万円の支払を命じた(また、原告が暴力を振るったこと、これらの事件が破局を決定したとの部分について、真実性、相当性はないとして誹謗中傷殿損も認め、謝罪広告の掲載も認めた)。

同様に離婚に至る経緯や離婚原因の公表がプライバシー侵害となると判示したものとして、最高裁平成16年11月25日第一小法廷判決[才口千晴裁判長](判時1880号40頁。

報知新聞(報知新聞社)が、有名女優と弁護士の夫婦について、近く離婚すること、破局が決定的になったのは弁護士である夫が妻の母親に対して暴力を振るって傷害を負わせたためであると報道したことから、弁護士である夫(原告)が、プライバシー侵害、誹謗中傷X損を理由に金1、000万円の損害賠償と謝罪広告を求めた。

また、判決は、著名人は事項によってはプライバシーの権利を放棄したと考えられる場合やその社会的地位に照らしプライバシーの侵害を主張しえない場合があることを認めつつ、本件のような特定の夫婦間の問題、子供の教育方針等についての具体的な問題については、「元来、当該家庭の機微に属し、他人がみだりに容啄することは差控えなければならない性質のものである」として、誹謗中傷x損と併せて被告らに金150万円の損害賠償を命じた。

東京地裁昭和49年7月15日判決[内藤正久コート](判時777号60頁)は、プライバシー侵害について、子供に暴力、威圧を加え、そのため妻との喧嘩が絶えず、妻は離婚を決意しているなどの事項は、通常人の立場に立ったとき公開されることを欲しない私生活に関するものであるとして、プライバシー侵害を認めた。

「週刊女性」(主婦と生活社)に、著名な劇画作家である原告について、スパルタ教育の名のもとに、食事、遊び方、日常のしつけ全般にわたって子供たちに対し暴力や威圧を加え、そのために妻との喧嘩が絶えず、かつ喧嘩の際に暴力を振るうため最近1年間くらいの間に4回も家出し、ついに離婚を決意するに至った等の記事が掲載されたため、原告が、主婦と生活社及びその編集人に対して、誹謗中傷R損及びプライバシー侵害を理由に、金5、000万円の損害賠償を求めて提訴した。

「原告の出生時の状況、身体的特徴、家族構成、性格、学業成績、教諭の評価等、サッカー競技に直接関係しない記述は、原告に関する私生活上の事実であり、一般人の感性を基準として公開を欲しない事柄であって、かつ、これが一般の人々に未だ知られていないものであるということができる。

そして、これが公表されたことによって原告は重大な不快感をおぼえていると認められる。

さらに、幼少時代に出席した結婚披露宴など、サッカーという競技に直接関係しない写真や、本件詩についても、右と同様に解することができる」として、プライバシー侵害を認め、金200万円の慰謝料を認めたが、パブリシティー権侵害は認められず、その他、原告作成の詩が無断で掲載されたことにつき複製権侵害が認められ、販売の差し止めと財産的損害として金185万円の賠償が認められた。

この判断は二審(東京高判平12年12月25日[篠原勝美コート]判時1743号130頁)でも維持された。

(2)私事の公表(生育歴、同棲、教育方針、離婚原因、収入、個人の嗜好、被疑者の妻であること等)ア生育歴プロサッカー選手である原告(被控訴人)について、その家族構成、幼稚園児の頃の性格、中学生時代の発言内容・学業成績、高校サッカー部での活動状況・監督との関係、高校時代における学業成績・不得意科目等を記載した本が出版されたことに対し、原告が、プライバシー、パブリシティ権、著作者人格権、著作権を侵害されたとして金4、700万2、754円の損害賠償並びに書籍の発行、販売及び頒布の差し止めを求めた。

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