ネットマイル面接実況中継事件

ネットマイル面接実況中継事件(2011年)とは

インターネットポイントサービスを提供するネットマイルで、2011年8月、社員男性がGoogle+(グーグル・プラス)を使い採用面接を実況中継。それが30歳の就職希望者を中傷するような内容であったにも関わらず、複数のメンバーが傍観していたことから、2ちゃんねるで炎上が置きました。

後に、会社側は、この面接自体が「架空だった」と主張しますが、多くの個人情報を預かる企業における社員のリテラシーの低さが問題視されました。

採用面接をリアルタイム中継

「採用の面接官が応募者を罵倒しながら、リアルタイムでその面接の様子を垂れ流している」とネット上で騒ぎが起こりました。

ネットマイルの中堅男性社員が実名登録するGoogle+のサークルで面接を実況中継したというのです。

▼男性社員のGoogle+での実況▼

"30歳の年齢で専門学校を今度卒業に来る人が新卒の面接に来た…どうしようw"

"後5分したら面接してあげないとw うっ自分より年下の人を新卒扱いで対応するなんてwノートでG+で実況するかw"

"自己紹介中だけど慣れてるから笑わない 「ぼっぼくは・・○○専門学校からきた、○田 慎んん吾です」 噛みまくりだよww そして声が小さいよ"

"なんで社会人をやって、また電子系の専門学校へ入学したのですか?と質問中"

"「えっと、昔は営業をやらsていぃたぁだいたのですが、体を壊しちゃって、ボクには合ってないなぁと思い、IT系に行きたいと思って学校にははいりました」文章が噛みまくっているがまじだぜ。"

"営業でもIT系の起業に入れるんじゃないの?と質問してもいいかな?"

"「はいぃい、そっそれはプログラマーになりたいからでです。今はjavaを学校で習っていまして、それを活かした職種に就きたいと思い御社を志望しました。」プログラム言語に関する質問はまだしてねーよ!"

"職歴と学歴にある5年のブランクは不問にしてるwwどうせニートだろうからww"

就職希望者の専門学校卒、30歳という経歴。その容姿と話し方……。

まるでコメディのような面接のやりとりを面白がり、約6人の友人が次々と煽るコメントを寄せています。

サークル内限定公開の設定とはいえ、明らかに人を見下したコメントを不快に感じた、つながりの誰かが告発したのでしょう。その夜、2ちゃんねるで祭りが始まります。

なんと架空の面接だった

間もなく、問題の掲示板の魚拓が2ちゃんねる等に流出し、問題の男性社員の実名や写真が次々と公開され、バッシングが過熱します。

その後、実はこの男性社員は人事部門には所属したことがなく、この面接自体がまったく架空のものであったという事実がネットマイル社から発表されました。

ほんのノリで行った空想の面接中継の先に、現実の厳しい処分が待ち構えていたことは言うまでもありません。

傍観者も同罪

この事件では、書き込んだ本人だけでなく、その実況に加担した“傍観者”たちも標的となりました。

企業人として、組織のコンプライアンスを犯した本人は言語同断。それを面白がった6人の“友人”もまた同罪と、それぞれGoogle+のプロフィールやfacebookアカウントなどから個人情報が抜き取られ、容赦なくさらされてしまいます。

これも覚えておくべきSNSの怖さといえます。自身の発言のみならず、問題となる書き込みへの賛同や容認もまた、個人攻撃を受ける理由となり得るのです。

スピーディな対応で風評の拡散をくいとめる

ネット畑企業ならではの機転

事件を起こした当人は、実名が大々的に公開されるなど重大なダメージを受けることとなりましたが、企業はというと、ネガティブイメージの定着を最低限に抑えることができたといえます。

そのカギとなったのが、迅速・的確な対応です。

  
▼時系列でみる、ネットマイルの対応▼
2011年8/9 16時~17時過ぎ 架空の採用面接実況中継
2011年8/9 21時20分頃 2ちゃんねる等で話題に。同社にクレームメール約50通が届く(~24時)
8/9 23時 社内で緊急調査、当該男性社員が虚偽の書き込みを行っていたことが判明
8/9 23時8分 当該社員に直属の上司が電話し、確認。虚偽の書き込みを認める
8/10 0時20分 当該社員Google+他のアカウントを削除
8/10 4時15分 同社サイトへの「お詫び」掲載
8/10 4時55分 採用専用ツイッター公式アカウントで「お詫び」掲載
8/10 9時20分 内定者、面接予定者への事情説明
8/10 9時30分 取引先への事情説明
8/10 11時30分 メディア向けプレスリリース配信

騒動に気づいてから本人への確認、そして自社サイトへの第一報掲出まで、夜を徹して6時間足らずの間に対応ができています。

また、影響力の大きい就職希望者への事情説明も、まずはツイッターのアカウントで行い、翌朝に個別連絡するなど、迅速な伝達もよかったといえそうです。

さらに、自社サイトへの謝罪文も、調査の進捗に合わせて一報、二報と段階的に掲出しており、2次的なクレームがほとんどなかったというお手本のような対応でした。

▼自社サイトに掲載された「お詫び」全文▼

SNSにおける弊社社員による不適切な書き込みについてのお詫び

このたびは、弊社社員が採用面接に関する不適切な書き込みをSNSで行いましたことを、心よりお詫び申し上げます。

弊社社員の言動に、多くの方々が不愉快な思いをなさったことと存じます。また、弊社にご応募くださった皆様におかれましては、弊社の個人情報の取扱について不安を抱かれたこととお察しいたします。誠に申し訳ございません。

今回の事態を受け、社内で緊急に行った調査の結果、SNSに書き込まれた「面接の実況」は架空のものであることが判明いたしました。当該社員は弊社の採用面接に関わる人事部門には属しておらず、これまで一度も面接を行ったことはなく、応募情報を目にする機会もまったくありませんでした。

取り急ぎ、現在までに判明した事実をご報告申し上げるとともに、重ねてお詫び申し上げます。

株式会社ネットマイル
代表取締役CEO
畑野仁一

社員の行動について、真摯に謝罪し、調査によってわかった事実を端的に伝えています。急ぐあまり、不完全な情報の出し方をするとかえって揚げ足をとられるネット風評の特性を理解した、専門畑ならではの善処だったといえるでしょう。とはいえ、面接が「架空だった」とした点については、「ほんとうに架空だったのか?」と疑問視する声が今でも根強いです。

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